「FAXをやめたいけど、取引先が使っているから無理」 「社内で反対されて、結局そのまま」 「何から手をつければいいのか分からない」
こんな悩みを抱えている経営者やDX担当者の方も多いのではないでしょうか?
実は、FAXの廃止に成功している企業には共通のステップがあります。
この記事では、FAX廃止を阻む「本当の壁」を整理したうえで、現場の反対を最小限に抑えながら進める具体的な方法を3つのステップでご紹介します。
※本記事に記載されている料金、補助金、制度などの情報は、2026年2月時点のものです。最新の情報については各サービスの公式サイトや関係機関にご確認ください。
FAX廃止が進まない「3つの壁」
多くの企業がFAX廃止に踏み切れない理由は、実は設備投資やシステムの問題ではありません。以下の3つの壁が、FAX廃止を阻んでいます。
壁1:取引先がFAXを指定してくる
「注文はFAXで送ってください」と取引先に言われてしまうと、対応せざるを得ません。特に、大手企業や官公庁との取引がある場合、相手の業務フローに合わせざるを得ないケースが多くあります。
近年では行政機関でもFAX廃止の動きが進んでいますが、業界や取引先の状況によっては依然としてFAXが必要とされるケースも少なくありません。
壁2:社内に抵抗勢力がいる
「FAXじゃないと不安」 「今まで通りのやり方でいい」
こうした声は、変化に対する不安から生まれます。特に、長年FAXを使ってきた社員ほど、新しいツールへの切り替えに心理的なハードルを感じやすい傾向があります。
ここで重要なのは、反対する人を「理解のない人」と見なさないことです。彼らには彼らなりの理由があり、その不安を解消することが廃止への近道になります。
壁3:どう進めればいいか分からない
「いきなり全部やめたら混乱する」 「段階的に進めるべき?でも何から?」
FAX廃止は、単に機械を撤去すれば終わりというものではありません。業務フローの見直し、取引先への通知、社内教育など、やるべきことが多岐にわたります。全体像が見えないまま進めると、現場が混乱し、結局元に戻ってしまうケースも少なくありません。
ステップ1:現状を「見える化」して、廃止の優先順位をつける
FAX廃止で失敗する典型的なパターンは、「来月から全部やめよう」と一気に進めようとすることです。これでは現場が混乱し、失敗してしまいます。
やるべきこと:FAXの使用状況を調査する
まずは、以下の項目をリストアップしましょう。
- 誰が使っているか(部署、担当者名)
- 何のために使っているか(注文受付、見積送付、契約書など)
- どこから送られてくるか / どこへ送っているか(取引先名)
- 月に何枚くらい使っているか(送信・受信それぞれ)
- 代替手段の有無(メール、電話、郵送などで対応可能か)
この調査には1〜2週間かけても構いません。正確な現状把握が、その後のスムーズな移行を支えます。
優先順位のつけ方
調査結果をもとに、FAXを以下の3つに分類します。
A:すぐにやめられるFAX
- 社内のみのやり取り
- 取引先との合意が得られやすいもの
- 使用頻度が低いもの
B:条件付きでやめられるFAX
- 取引先との調整が必要
- 代替ツールの導入が必要
- 一定の準備期間が必要
C:当面残すFAX
- 法律や業界慣習で必須
- 取引先が変更に応じない
- 代替手段がない
まずはAから着手し、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。「全部やめなきゃ」というプレッシャーから解放されると、現場の協力も得やすくなります。

ステップ2:代替ツールを選び、小さく試す
FAX廃止の代替手段として、主に以下の選択肢があります。それぞれの特徴を理解したうえで、自社に合ったものを選びましょう。
主な代替ツール4つ
1. インターネットFAX(クラウドFAX)
パソコンやスマートフォンからFAXの送受信ができるサービスです。FAX機は不要で、相手がFAXを使っていても問題なくやり取りできます。
メリット:
- 物理的なFAX機が不要になる
- 外出先でもFAXの確認・送信が可能
- 受信したFAXをPDFで保存できる
デメリット:
- 月額利用料がかかる(サービスによって数百円〜数千円)
- 相手が従来のFAXを使っている限り、完全なペーパーレスにはならない
代表的なサービス:「eFax」「秒速FAX」「MOT/FAX」など
2. 電子契約システム
契約書や注文書などを電子データでやり取りし、電子署名で締結するシステムです。
メリット:
- 契約業務が完全ペーパーレス化
- 印紙税が不要になる
- 締結までの時間が大幅に短縮
デメリット:
- 取引先も同じシステムを使う必要がある
- 導入時に社内ルールの整備が必要
代表的なサービス:「GMOサイン」「クラウドサイン」「DocuSign」など
3. ビジネスチャット
社内外のコミュニケーションをチャット形式で行うツールです。ファイルの送受信も可能です。
メリット:
- リアルタイムなやり取りが可能
- 履歴が残るため、確認漏れが減る
- 複数人での情報共有が簡単
デメリット:
- 相手も同じツールを使う必要がある
- 慣れるまでに時間がかかる場合がある
代表的なサービス:「Chatwork」「Slack」「Microsoft Teams」など
4. メール+クラウドストレージ
メールでのやり取りに、大容量ファイルはクラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)を併用する方法です。
メリット:
- ほぼ全ての企業が使える
- 追加コストが最小限
- 取引先への説明が不要
デメリット:
- セキュリティ対策を自社で行う必要がある
- ファイルの受け渡し手順が増える
小さく試す「テスト運用」のすすめ
ツールを選んだら、いきなり全社展開せず、以下の手順でテスト運用を行いましょう。
1. テスト部署を決める
最初は、比較的柔軟に動ける部署や、ITに理解のあるメンバーがいる部署を選びます。
2. 期間を区切る
「1か月間試してみる」など、明確な期限を設定します。これにより、「合わなければ戻せる」という安心感が生まれます。
3. 使い勝手を記録する
これらを記録しておくことで、全社展開時の課題を事前に潰せます。
4. 数字で効果を測る
- FAX送受信枚数の変化
- 作業時間の短縮(分単位で)
- コスト削減額
「なんとなく便利」ではなく、具体的な数字で示すことで、経営層や現場の理解が得やすくなります。

ステップ3:取引先・社内への説明&段階的な移行
テスト運用で手応えを感じたら、いよいよ本格的な移行フェーズに入ります。ここで最も重要なのは、「相手に配慮したコミュニケーション」です。
取引先への通知:3か月前が目安
取引先へのFAX廃止通知は、最低でも3か月前には行いましょう。急な変更は、相手の業務に混乱を招き、関係性の悪化につながります。
通知文に含めるべき内容
-
廃止の時期 「2026年5月1日をもちまして、FAXでの受付を終了いたします」
-
理由(簡潔に) 「業務効率化とペーパーレス化推進のため」 (環境配慮やコスト削減など、相手も納得しやすい理由を選びます)
-
代替手段の提案 「今後はメール([メールアドレス])にてご連絡をお願いいたします」 「電子契約システム[システム名]の導入もご検討いただけます」
-
移行期間の設定 「2026年3月末までは、従来通りFAXでも受け付けます」
-
問い合わせ先 担当者名と連絡先を明記
通知のタイミング
- 第1回通知(3か月前): 廃止の告知と代替手段の案内
- 第2回通知(1か月前): リマインドと移行状況の確認
- 第3回通知(1週間前): 最終案内
複数回に分けて通知することで、見落としを防ぎ、相手に準備の時間を与えられます。
社内への説明:「なぜ」を丁寧に伝える
社内への説明では、「FAXをやめます」という結論だけでなく、その背景と理由を丁寧に伝えることが重要です。
説明会で伝えるべきポイント
1. 現状の課題を共有する
「現在、月に約〇〇枚のFAXを使用しており、そのコストは年間〇〇万円です」 「FAXの確認漏れによるトラブルが、昨年〇件発生しています」
具体的な数字を示すことで、「なぜ変える必要があるのか」が伝わります。
2. 廃止後のメリットを示す
- 外出先でも確認・返信できる
- 印刷や仕分けの手間が減る
- 過去のやり取りが検索しやすくなる
ここでは、「会社のため」ではなく「自分たちの業務が楽になる」という視点で伝えるのがコツです。
3. 不安を受け止める
「慣れるまでは大変だと思います」 「困ったことがあれば、いつでもサポートします」
変化に対する不安を否定せず、受け止める姿勢を示しましょう。
4. 段階的な移行計画を示す
「いきなり全部変えるのではなく、まずは〇〇部署から始めます」 「1か月間のお試し期間を設けます」
急な変更ではなく、計画的に進めることが伝わると、抵抗感が和らぎます。
移行期間中のサポート体制
移行期間中は、以下のようなサポート体制を整えましょう。
1. マニュアルの作成
- 画面のスクリーンショット付き
- 「こんなときはどうする?」というQ&A形式
- 紙とデータの両方で配布
2. 相談窓口の設置 「困ったことがあれば、〇〇さん(内線〇〇)まで」 担当者を明確にし、気軽に質問できる雰囲気を作ります。
3. 定期的な振り返り 週1回程度、短時間のミーティングを開き、困っていることを共有します。 「実は〇〇がうまくいかなくて...」という声を早期にキャッチできます。

よくある失敗パターンと、その対策
ここまで、FAX廃止の具体的なステップをご紹介してきました。しかし、実際に進めてみると思わぬ壁にぶつかることもあります。ここでは、よくある失敗パターンと、その対策をまとめます。
失敗パターン1:「一斉廃止」で現場が大混乱
状況: ある日突然、「来月からFAXは使えません」と通達。現場は代替手段の使い方も分からず、業務が滞る。
対策: 前述の通り、段階的な移行が基本です。小さな成功体験を積み重ねることで、現場の不安を解消しましょう。
失敗パターン2:取引先への配慮不足でクレームに
状況: 廃止通知を1か月前に送っただけで、取引先から「急すぎる」「対応できない」とクレームが入る。
対策: 3か月前の初回通知、1か月前のリマインド、1週間前の最終案内という3段階での通知を徹底します。また、相手の状況に応じて、移行期間を柔軟に延長する姿勢も大切です。
失敗パターン3:コストが予想以上にかかる
状況: インターネットFAXサービスを導入したが、送受信の従量課金が高く、結局コスト増に。
対策: サービス選定時に、自社の送受信枚数と料金プランを照らし合わせます。無料トライアル期間を活用し、実際のコストを算出してから本契約しましょう。
失敗パターン4:社内の反対を押し切って強行突破
状況: 経営層の判断で強制的にFAXを廃止。現場の反発が強く、業務効率がかえって低下。
対策: 「なぜやめるのか」を丁寧に説明し、現場の声を聞く場を設けます。反対意見は「抵抗勢力」ではなく、「リスクを教えてくれる貴重な情報源」と捉えましょう。
FAX廃止で期待できる3つのメリット
FAX廃止を検討する際、以下のような効果が期待できます。自社の状況に照らし合わせて、効果を試算してみましょう。
メリット1:ランニングコストの削減
FAXを廃止することで、以下のコストが削減できる可能性があります。
- 通信費: FAX専用回線の月額基本料金
- 消耗品費: 用紙代、インク・トナー代
- 保守費用: FAX機の保守契約、故障時の修理費用
- スペース費用: FAX機の設置スペース
削減額は、現在の使用頻度や契約内容によって異なります。まずは月間のFAX送受信枚数と、現在かかっている費用を確認してみることをおすすめします。
メリット2:業務効率の向上
FAXをデジタル化することで、以下のような業務改善が期待できます。
- 場所を選ばない確認・送信: 外出先や在宅でも、スマホやパソコンから対応可能
- 検索性の向上: 過去のやり取りを日付や取引先名で瞬時に検索
- 紛失・見落としの防止: データ管理により、「FAXが見当たらない」「確認漏れ」が減少
- 仕分け作業の削減: 受信したFAXを担当者別に仕分けする手間が不要
特に、FAXの確認や仕分けに多くの時間を使っている場合は、大きな効率化が見込めます。
メリット3:セキュリティリスクの低減
紙のFAXには、以下のようなセキュリティ上の課題があります。
- 受信トレイに放置され、誰でも見られる状態になる
- 誤送信した場合、回収が困難
- 紛失や盗難のリスクがある
インターネットFAXや電子契約システムであれば、アクセス権限を設定でき、閲覧履歴も記録されるため、情報管理の面で安心です。
それでもFAXを残すべきケースとは?
ここまで、FAX廃止の方法をお伝えしてきましたが、すべての企業が完全にFAXをやめられるわけではありません。以下のようなケースでは、一部FAXを残す選択も合理的です。
ケース1:法令や業界ルールで必須の場合
一部の業界では、法律や業界団体の規則でFAXでの提出が求められることがあります。この場合は、無理にやめる必要はありません。
対策としては、最小限の台数に集約し、他の業務ではFAXを使わないようにします。
ケース2:取引先が変更に応じない場合
何度交渉しても、取引先がFAXでのやり取りを譲らない場合もあります。特に、相手が大手企業や官公庁の場合、自社の都合だけで変更を強いることは難しいでしょう。
この場合、インターネットFAXサービスを導入することで、物理的なFAX機は撤去しつつ、FAXでのやり取りは継続できます。
ケース3:緊急時のバックアップとして
災害時などでインターネットが使えなくなった場合、電話回線を使うFAXが有効な連絡手段になることもあります。
BCP(事業継続計画)の一環として、最低限の台数を残しておくという選択肢もあります。
まとめ:FAX廃止は「目的」ではなく「手段」
ここまで、FAX廃止の具体的なステップをご紹介してきました。最後に、最も大切なことをお伝えします。
FAX廃止は、それ自体が目的ではありません。
本当の目的は、
- 業務を効率化すること
- コストを削減すること
- 働きやすい環境を作ること
です。
もし、FAXを残した方が業務がスムーズに回るのであれば、無理にやめる必要はありません。逆に、「DXだから」「時代遅れだから」という理由だけで急いで廃止すると、かえって現場が混乱します。
大切なのは、自社の状況を正しく把握し、現場と取引先の両方に配慮しながら、段階的に進めることです。
今日からできる最初の一歩
この記事を読んで、「うちでもできるかも」と感じていただけたなら、まずは以下の一歩から始めてみてください。
1. FAXの使用状況を1週間記録する
誰が、何のために、何枚使っているかをリストアップします。
2. 1つの部署でインターネットFAXを試してみる
多くのサービスには無料トライアル期間があります。まずは触ってみることから始めます。
3. 取引先1社に、メール移行の相談をしてみる
「よかったらメールでやり取りしませんか?」と提案するだけでも、意外と受け入れてもらえることがあります。
小さな一歩の積み重ねが、大きな変化につながります。
「一人で進めるのは不安」「専門家のサポートが欲しい」という方は、お気軽にご相談ください。
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