Webサイト自動翻訳プロダクト開発支援

背景
クライアントのスタートアップ企業は、Web サイトの多言語化を自動化するサービスの立ち上げを計画していました。グローバル展開を目指す企業にとって、Web サイトの多言語化は必須である一方で、従来の翻訳サービスでは導入のハードルが高く、更新のたびに翻訳作業が発生するため、運用負荷が大きいという課題がありました。
既存の翻訳サービスの多くは、サイト構造の大幅な改修が必要であったり、更新時に手動で翻訳を依頼する必要があるなど、スピード感を持ってグローバル展開したい企業にとっては使いづらいものでした。特にスタートアップ企業や中小企業では、専任の翻訳担当者を置くリソースがなく、「サイトを多言語化したいが、導入・運用のコストが見合わない」という声が多く聞かれました。
同社が目指したのは、「スクリプト 1 行を埋め込むだけで、既存サイトを一切改修せずに多言語化でき、サイトが更新されたら自動で検知して即座に翻訳を反映する」という、これまでにない価値提供でした。しかし、プロジェクト開始時点では、プロダクトは構想段階であり、社内にエンジニアリングチームも存在しない状況でした。アイデアはあるものの、それを実現する技術的な基盤がゼロからのスタートという、スタートアップならではの課題に直面していました。
このコンセプトを形にするためには、技術的な難易度が高く、かつスタートアップとして短期間で MVP を市場に投入する必要がありました。プロダクトの中核となる埋め込みスクリプトの開発から、ユーザー管理画面、さらにはインフラ構築まで、すべてを一貫して任せられる技術パートナーが不可欠でした。
ゼロイチラボはプロダクトの早期リリースと技術的な基盤を構築することを目的として、クライアントとともにプロジェクトをスタートしました。
ソリューション
プロジェクトは 2024 年 2 月に開始し、まずプロダクトのコアとなる技術アーキテクチャの設計から着手しました。ゼロイチラボは、要件定義の段階から参画し、「既存サイトを改修せずに多言語化する」という技術的な課題をどう解決するか、クライアントとともに検討を重ねました。
システムの核となる仕組みとして、TypeScript ベースの Web サイトの自動翻訳スクリプトを開発しました。ユーザーが自社サイトにスクリプトを 1 行埋め込むだけで、サイトへのアクセス時にリアルタイムでコンテンツを翻訳してキャッシュを作成し、レンダリングする仕組みです。これにより、既存の Web サイトに一切手を加えることなく、多言語版を提供できるようになりました。
翻訳エンジンには、OpenAI の GPT モデルと Google Cloud Translation を組み合わせて活用しました。コンテンツの性質や文脈に応じて最適な翻訳エンジンを選択することで、翻訳の精度と速度を両立しています。また、サイトの更新を自動検知する仕組みを実装し、元サイトのコンテンツが変更された際には、即座に翻訳を更新して反映できるようにしました。
ユーザー管理画面には Next.js (App Router) を採用し、導入企業が翻訳状態の確認や言語設定の管理、利用状況のモニタリングを行えるダッシュボードを開発しました。Firebase Auth による認証基盤と、Firestore を活用したデータ管理により、セキュアかつスケーラブルな管理環境を構築しています。
インフラ面では、Cloud CDN と Cloudflare を組み合わせることで、グローバルな配信パフォーマンスを確保しつつ、コストを最適化しました。また、Firebase Functions を活用したサーバーレスアーキテクチャにより、トラフィックの変動に柔軟に対応できる設計としました。
開発期間は約 3 ヶ月という短期間でしたが、MVP 開発に必要な機能を優先順位付けし、段階的にリリースしていくアジャイルなアプローチを採用しました。週次でのレビューミーティングを通じて、クライアントとの認識合わせを密に行い、プロダクトの方向性を柔軟に調整しながら開発を進めました。
結果
2024 年 5 月、約 3 ヶ月の開発期間を経て、MVP のリリースを完了しました。
最も大きな成果として、「最短 3 分でサイトを多言語化できる」という当初の目標を実現しました。ユーザーは管理画面でアカウントを作成し、発行されたスクリプトを自社サイトに埋め込むだけで、すぐに多言語版サイトを公開できるようになりました。従来の翻訳サービスでは数週間から数ヶ月かかっていた導入プロセスが、大幅に短縮されました。また最小のエンジニアチームでの開発であったこともあり、開発コストを抑え、提供価格を抑えることができました。
サイト更新の自動検知と即時翻訳反映の仕組みにより、サイト運用担当者の翻訳作業工数が劇的に削減されました。「コンテンツを更新するたびに翻訳会社に依頼する」という従来のワークフローから解放され、日本語でコンテンツを更新すれば自動的に多言語版も更新されるという体験が実現しました。
ユーザー管理画面では、翻訳状態のリアルタイムモニタリングや、翻訳対象言語の選択、用語集の登録などの機能により、導入企業が自らコントロールできる環境を提供しています。
スタートアップとして最も重要だった「スピード」についても、約 3 ヶ月での MVP リリースという目標を達成しました。エンジニアリングチームがゼロの状態から、プロダクトの中核となる技術基盤をすべて構築できたことは、クライアントに対して大きく貢献できたと考えています。また、クライアントにとって「アイデアはあったが形にできなかった構想が、短期間で実際に動くプロダクトになった」という達成感は、事業推進の大きな原動力となっているのではないかと考えています。市場に早期参入することで、競合優位性を確保し、ユーザーフィードバックを基にした継続的な改善サイクルを回すことができています。
さらに、ゼロイチラボがフルスタックで開発を担ったことにより、クライアントは採用活動や組織づくりといった、本来スタートアップが注力すべき事業開発に集中できる環境が生まれました。プロダクトが市場でトラクションを得てから、自社でエンジニアリングチームを構築していくという、リスクを抑えた事業立ち上げのアプローチが実現できたことも、大きな成果の一つです。